同人イベントの会場で「また会いたい」と思う作家さんと出会ったとき、名刺一枚があるだけで連絡先の交換が驚くほどスムーズになります。スマートフォンでSNSを見せ合う方法もありますが、名刺は相手のポケットに残る物体であり、後から見返したときに思い出をつなぐきっかけになります。
この記事では、同人作家向けの名刺を初めて作る方に向けて、記載内容の設計からデザインデータの作り方、印刷所への入稿まで、順を追って解説します。
名刺一枚で何が変わるか──ゴールを先に決める
同人イベントにおける名刺は、ビジネスの名刺とは目的が異なります。取引先への挨拶ではなく、「この作家さんをもっと追いたい」という気持ちに応えることがゴールです。
名刺を受け取った相手が、その場ですぐにSNSをフォローしたり、サークルサイトをブックマークできる状態を作る──これが名刺の役割です。逆に言えば、その目的を果たせない情報は入れなくていいということでもあります。
「渡した後、相手にどんなアクションをしてほしいか」を最初に一つ決めましょう。SNSフォローなのか、サイト訪問なのか、次のイベントでの再会なのか。目的が決まると、何を書くか・何を省くかの判断軸ができます。
名刺の目的は「渡すこと」ではなく「渡した後の繋がりを作ること」です。ゴールを一つ決めてから作り始めましょう。
(参考: コミックマーケット公式サイト)
作り始める前に決める3つのこと
渡す相手とシーンを具体化する
名刺を渡す相手を具体的に想像してみてください。
- 読者・購入者向け:サークル名、SNSアカウント、QRコードを大きく載せる構成が向いています
- 作家同士の交流向け:ペンネームとSNSに加え、ジャンルや活動スタイルを入れると「どんな作家さんか」が伝わります
- 兼用(どちらにも渡す):シンプルな構成を優先し、必要な情報だけに絞るのが正解です
同じ名刺を全員に渡そうとすると情報が多くなりすぎる傾向があります。最初は「一番よく渡す相手」に合わせた一種類を作るのがおすすめです。
サイズを決める
同人作家が使う名刺のサイズは主に以下の3種類です。
サイズ | 寸法(仕上がり) | 向いている用途 |
|---|---|---|
標準名刺 | 91×55mm | 配りやすい、名刺入れに収まる、最も一般的 |
ポストカード | 100×148mm | イラストを大きく載せたい、作品見本として使う |
正方形(スクエア) | 55×55mmなど | 個性を出したい、インパクト重視 |
初めて作るなら標準名刺サイズが安心です。テンプレートが豊富で、印刷所の価格も最も安い傾向があります。
(参考: ラクスル 公式サイト)
枚数と予算の目安を立てる
枚数が多いほど1枚あたりの単価は下がりますが、初回はデザインを試す意味でも少なめに発注するのが賢明です。目安として:
- 50枚:デザインの試し刷り、小規模イベント用
- 100枚:一般的な参加イベント1〜2回分
- 300枚以上:コミケなど大規模イベント向け
費用の目安は両面カラーで100枚なら1,500〜3,000円程度です。
サイズと枚数をここで決めておくと、デザイン作業の方向性と印刷所の絞り込みが一気に楽になります。
名刺に何を書くか──情報設計のステップ
必ず入れる情報
以下の4項目は、目的を問わずほぼすべての同人名刺に入れるべき情報です。
- ペンネーム:名刺の中で最も目立つ位置に配置します。読みにくい字体は避け、すぐ読める書体を選びましょう
- SNSアカウント(X/Pixivなど):フォローしてほしい主要プラットフォームを一つか二つ厳選します
- QRコード:SNSアカウントやまとめページ(Litlink等)にリンクするQRコードをつけると、入力の手間が省けます
- ジャンル・活動内容:「オリジナルBL漫画」「男性向けCG集」などの一言があると、受け取った相手が後から思い出しやすくなります
入れるか迷う情報
- サークル名:ペンネームと同じなら省略可。別名義で活動している場合は両方載せると親切です
- サイトURL・まとめページ:SNS以外に常設のサイトがあれば載せる価値があります。Litlinkなどのまとめページなら、URLを一つ載せるだけで複数のSNSに誘導できます
- イラスト・キャラクター:名刺らしさよりも作品の雰囲気を伝えたい場合に有効です。ただし情報と一緒に詰め込みすぎると読みにくくなります
- メールアドレス:コラボや取材問い合わせを想定している場合は有効です
入れないほうがいい情報
- 本名・住所:同人活動では原則不要です。誰に渡るかわからない環境では、プライバシー保護の観点から載せないのが基本です
- 電話番号:不要なトラブルのリスクがあります。問い合わせはSNSのDMかメールで受けるようにしましょう
情報の優先順位が決まったら、「主役・脇役・省く」の三段階に仕分けします。ペンネームとSNSが「主役」、ジャンルが「脇役」、それ以外は載せても省いても変わらないなら省く──この考え方でレイアウトが自然と決まってきます。
情報を削ることへの躊躇が、名刺をごちゃごちゃにする最大の原因です。「これがないと困る人がいるか?」を基準に判断しましょう。
(参考: pixiv ヘルプセンター)
デザインデータを作る
使うツールを選ぶ
印刷所への入稿には、仕様に合ったデザインデータを用意する必要があります。主に使われるツールは以下の3つです。
ツール | 費用 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
Canva | 無料〜(PDF入稿はProが必要な場合あり) | テンプレート豊富、直感的 | CMYKで出力できない(RGB) |
Adobe Illustrator | 月額2,728円〜 | 業界標準、CMYK完全対応 | 習熟に時間が必要 |
CLIP STUDIO PAINT | 買い切り3,300円〜 | イラスト主体の名刺に向く | 印刷用書き出し設定に注意 |
初めての方にはCanvaが最も手軽です。ただし、Canvaのデータは色がRGBで出力されるため、印刷後に色がくすむことがあります。高品質を求めるならIllustratorを使うか、Canvaで作ったデータを印刷所のRGB対応コースで入稿するのが安全です。
(参考: Canva 公式サイト)
テンプレートを使って作る手順
印刷所のテンプレートを使うことで、塗り足しや解像度の設定を最初から正確に準備できます。
- 印刷所のサイトからテンプレートをダウンロードする(PDF/AI/PSD形式)
- テンプレートをデザインソフトで開き、ガイドラインを確認する(仕上がりライン・塗り足しライン・文字セーフエリア)
- 背景・イラストを配置する。塗り足しエリアまで背景を伸ばすことを忘れずに
- テキストを入力する。重要な文字は「文字セーフエリア」の内側に収める
- QRコードを生成・配置する(QRコード生成サービスを利用)
- 印刷所が指定するファイル形式で書き出しする
塗り足しと解像度を必ず確認する
最も多い失敗は「塗り足しの設定忘れ」と「解像度不足」の二つです。
- 塗り足し(ブリード):仕上がりサイズより上下左右各3mm大きく作ります。これがないと断裁時に白い縁が出ます
- 解像度:印刷用は350dpi以上が基準。Webや画面用の72dpiデータを使うと印刷がぼやけます
印刷所のテンプレートを使えば、塗り足しと解像度の設定ミスをそもそも防げます。初めての入稿では必ず活用しましょう。
印刷所の選び方と入稿の注意点
名刺印刷に対応している印刷所は多岐にわたります。同人誌専門の印刷所だけでなく、ネット印刷全般を扱う会社も名刺に強いものが多く、価格帯の選択肢が広がります。
印刷所 | 特徴 |
|---|---|
グラフィック | ネット印刷大手、名刺専用テンプレートが豊富、価格が安い |
ラクスル | テンプレートが豊富、ブラウザ上でデザインを完結させることも可 |
栄光(えいこう) | 同人誌も扱う、同人作家向けの用紙種が選べる |
プリントパック | 大量印刷向け、最安値圏 |
入稿前に必ず確認するポイントは以下の4点です。
- カラーモード(CMYK):ほとんどの印刷所はCMYKを要求します。RGBのまま入稿すると色が変わります
- フォントのアウトライン化:Illustratorを使う場合、テキストをアウトライン化しないとフォント欠けが起きます
- ファイル形式:印刷所が指定するPDF/AI/PSDで書き出します
- 納期の確認:イベント当日から逆算して、最低1週間前には注文を済ませましょう
(参考: グラフィック 公式サイト)
よくあるつまずきと対処法
色が暗くなった/くすんだ → RGBで作ったデータをそのまま入稿した可能性があります。Illustratorであればドキュメントカラーモードを「CMYK」に変更し、色を調整してから再入稿しましょう。
文字が小さすぎて読めない → 名刺は小さい媒体なので、本文フォントは7pt以上、重要情報は10pt以上が目安です。デザイン段階で実寸プリント(家庭用プリンター可)して確認するのが確実です。
塗り足しがなくて白縁が出た → 次回から印刷所のテンプレートを使うことで防げます。今回分は印刷所に問い合わせると対応を相談できる場合があります。
QRコードが読み取れない → QRコードの色が薄すぎるか、サイズが小さすぎる可能性があります。白地に黒が基本で、最低でも2cm角以上で配置しましょう。
入稿前の最終チェックリスト
印刷所に入稿する前に、以下の項目を確認してください。
- [ ] サイズは仕様通りか(塗り足し込みで設定されているか)
- [ ] カラーモードはCMYKになっているか(Canvaを使う場合は印刷所のRGB対応コースを使う)
- [ ] 解像度は350dpi以上か
- [ ] フォントはアウトライン化されているか
- [ ] ペンネーム・SNSアカウントに誤字はないか
- [ ] QRコードをスマートフォンで実際に読み取れるか
- [ ] 納期はイベント日に間に合うか
一つでも不安な項目があれば、入稿前に印刷所のサポートに問い合わせましょう。印刷後の修正はできません。
完成後の次のアクション
名刺は作って終わりではありません。以下の一歩を踏み出すことで、名刺の効果が格段に高まります。
イベント前にやること
- SNSに「こんな名刺を持っていきます」と投稿する:事前告知になり、会場での話題づくりになります
- 名刺ケース(カードケース)を用意する:シワや汚れを防ぎ、スムーズに渡せます
イベント当日にやること
- 名刺をもらったらその日のうちにフォローする:相手が渡してくれた意図に応えることが次の縁につながります
- 名刺を見本誌の横に置く:「どうぞお気軽に」の雰囲気が出て、声をかけやすくなります
まずは次のイベントに向けて、標準名刺サイズ100枚を一種類作ることを目標にしてみてください。渡せる名刺がある状態で参加するだけで、会場での交流がまったく変わります。
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